国際会議場とラグジュアリーホテルの一体開発

新大宮に新たな風を吹き込むきっかけになったのは、県内最大の会議場「奈良県コンベンションセンター」と県で初となるラグジュアリーホテル「JWマリオット・ホテル奈良」の開業だ。約3万1,800㎡にも及ぶ県営プールと警察署跡地の活用にあたり「ホテルを核とした賑わいと交流の拠点」として2020年に整備された。
寺社仏閣や奈良公園の鹿など豊富な観光資源を持つ奈良県は長年、意外な課題に悩まされていた。それは「観光客は来るが泊まらない」ということ。観光庁の調査で、県の宿泊者数が47都道府県中最下位になった年もあった。京都や大阪に隣接し「日帰りで行ける旅行先」というイメージが定着しているのと、そもそも県内にホテルの数が少ないのが原因だという。
「奈良の観光を日帰り型から滞在型に」―。県肝いりの政策を実現すべく、県が公募した民間事業者によって、新大宮の県有地が一体開発された。
演奏会や演劇に適した「天平ホール」
奈良県コンベンションセンターは、2,000人規模の国際会議が可能な「コンベンションホール」、演奏会や演劇に適した「天平ホール」、開放感あふれる屋根付き屋外イベントスペース「天平広場」、観光振興施設として入居する「奈良蔦屋書店」などで構成される。
2024年6月にはコンベンションホールで大阪・関西万博の参加者会議が開催され、約160カ国から約600人が参加した。奈良県観光局観光力創造課の担当者は「これまでの県内施設では、500人規模の会議が限界だった。大規模なMICEを誘致することによる周辺への経済効果は大きい」と話す。同センターの開業以来、年間30件を超える国際会議や学術集会を開催しているという。
2,000人規模の国際会議が可能な「コンベンションホール」
地域に開かれたイベントも
「国際会議だけでなく、地域の皆さんに開かれた施設でありたい」と笑顔を見せるのは同センターの運営・管理を担うコンベンションリンケージの武野正浩マネージャー。奈良蔦屋書店が天平広場で年4回開催する「奈良蚤の市」は、毎回約2,000人が訪れる一番の人気イベント。食器やインテリア雑貨、アクセサリー、各種フードなど多種多様な商品を扱う約50店が出店し、会場は朝から大賑わいになる。
「観光客向けの観光振興施設として作られた店だが、書店にカフェという特性上、地元の方の利用が多いですね」と話すのは奈良蔦屋書店の梅田学店長。併設のスターバックスコーヒーで注文したドリンクを片手に本や雑誌を読むことができるのが同店の特徴だ。
また、定期的にポップアップイベントを開催し、「いつ来ても〝サムシングニュー〟に出会える店づくりを目指している」(梅田店長)という。ちなみに2024年に最もヒットした企画は、日本全国のご当地梅干しや梅の加工品を集めた「梅祭」。書店の枠組みを超えた、新大宮の文化発信・交流拠点になっている。
日本初進出に奈良を選んだ理由

「This is the center of Nara.」—。こう力強く宣言するのはJWマリオット・ホテル奈良のクリスタンドル クラウス総支配人。「近鉄奈良から一駅離れた地での開業をどのように捉えているか?」と記者が投げかけた質問への回答が前述したメッセージだった。奈良の人気観光地は、奈良公園や東大寺など近鉄奈良駅前に集中している。しかし、平城宮跡や西の京エリア、南の橿原神宮に飛鳥・吉野エリアなども足を延ばす価値がある観光スポットだ。もっと広域で見れば、京都や大阪、三重も含めて「どこにでもアクセスしやすく、新大宮が近畿の中心であるとも言える」と総支配人は強調する。
クリスタンドル クラウス さん
JWマリオットの「JW」は、マリオットの創業者、ジョン・ウィラード・マリオット(John Willard Marriott)の頭文字。JWマリオットは、マリオット・インターナショナルが運営する最上級のホテルブランドで、日本国内では奈良が初進出。JWマリオットの1号店は、米・ワシントンDCで開業した歴史を持つ。東京でも大阪でも京都でもなく、奈良を日本初進出の場に選んだのは、その国の「起源」となった都市であることに意味があったと言われている。
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ラウンジ&バー
「FLYING STAG」 -
レストラン
「シルクロードダイニング」
マリオットの開業がもたらした効果
コンベンションセンターとJWマリオットの開業は、地域に大きな影響を与えた。「マリオットができると聞き、この地に開店を決意した」と話すのは、「五感魚銀」の店主・角谷翔平さん。ミシュランの一つ星を獲得し、日本全国からリピーターが訪れる、気鋭の和食店だ。角谷さんが毎朝市場に足を運び、目利きした鮮魚と奈良県産ヒノヒカリを特注の釜でふっくらと炊き上げたご飯は絶品。炭火で焼き上げる食材の芳ばしい香りや、釜から吹き上がる蒸気の臨場感などもカウンター越しに楽しめる。
「街がどんどん良くなっていくのを実感している。周辺には高い志を持ったお店も多い。当初はならまちで物件を探していたが、新大宮を選んで正解だった」と角谷さんはにっこり。
五感 魚銀
(徒歩2分/約110m)
■奈良市大宮町6-4-13
tel:0742-36-6668
ランチ12:00~14:30、
ディナー18:00~22:30
月曜定休[完全予約制]

もう一つの外資系ホテル

「ホテルには街を変える力がある」と熱く語るのは、ノボテル奈良の戒田真総支配人。仏ホテル大手・アコーが運営する外資系ホテルブランドで、マリオットの後を追うように、2024年秋に開業した。「決め手となったのはコンベンションセンターの隣接地だということ。国内外のMICEが開催されることによる宿泊需要は大きい」と戒田総支配人は話す。
同ホテルの1階エントランスを入ると、奈良の伝統的な「七宝柄」をモチーフにした、鮮やかな行灯が目に飛び込んでくる。「ソーシャルラウンジ」と名付けられたその空間は「宿泊客と地域の人々が出会い、交流する場」なのだという。時間帯によって行灯の色が変わるので、一度訪れてみてほしい。
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鮮やかな行灯が特徴的な
ソーシャルラウンジ -
奈良の美しい山々を一望できる
ルーフトップテラス
市役所に芝生広場が誕生
奈良市役所も大きく生まれ変わった。2024年6月、市役所の南側に1,700㎡の芝生広場が誕生。芝生でピクニックをしたり、ベンチでくつろいだり、子どもたちは走り回って遊んだり、幅広い世代の市民が集う、まるで公園のような場所になっている。「デジタル化が進み、市役所に来る機会が減少する中で、どう賑わいを作るかが課題だった。市役所に用事がない時でも、遠慮なく芝生広場を使ってもらいたい」と話すのは、奈良市役所資産管理課長の久保田謙二さん。
2025年2月には、芝生広場の南東にカフェレストラン「TORRY PINES」(トリーパインズ)がオープン。芝生広場のさらなる賑わい創出を目的に市が公募型プロポーザルを行い、株式会社VINTAGE GARDEN(奈良市・平島由美子社長)が運営事業者に選定された。
同店のテラス席は犬同伴での利用が可能。平島社長は大の犬好きで「新大宮にはワンちゃん連れで入れるカフェがなかった。地域の方から〝こんな店を待っていた〟と喜んでもらえてうれしい」と微笑む。子どもたちが芝生広場で遊ぶ様子を見守りながら、テラスでコーヒーを楽しむ家族連れも目立つという。
TORRY PINES
(徒歩1分/約80m)
■奈良市役所南側芝生広場内
tel:050-8884-8646
11:00〜21:00(20:30L.O.)
無休

同社はイベント企画・プロデュースが本業でJWマリオット・ホテル奈良で開催される各種イベントの装飾なども担当している。今後は同ホテルと連携し、同店や芝生広場を活用したウェディングも企画する予定だ。
「市長からも〝今までの奈良になかった、おしゃれな空間に育てていってほしい〟と期待されている。ウェディングに加えて、音楽ライブや朝市なども定期的に開催していきたい」と平島社長は目を輝かせている。
これからの進化が楽しみな街
今回、新大宮の開発に携わる多数の人や地域住民に取材をしたが、皆口をそろえて「街が変わり、生活が豊かになった」と話していたことが印象的だった。新大宮は奈良の「副都心」として、これからも進化を続けていくだろう。

ジャンル豊富なグルメスポット
新たな街のランドマークの誕生で
盛り上がりを見せる新大宮周辺には
飲食店も目白押し。
長年地域で愛される老舗からSNS映えも
抜群な新顔まで、
日常使いできるお店をピックアップした。

1奈良で創業60余年の釜めし専門店「志津香 大宮店」

志津香 大宮店
(徒歩9分/約650m)
■奈良市大宮町4-249-4
tel:0742-93-8029
11:00~14:30(L.O.)、
【金・土・日・祝】
11:00~14:30(L.O.)
17:00〜19:00(L.O.)
※テイクアウトは11〜19時迄
火曜定休、
月曜臨時休業(祝日は営業)

注文ごとに職人が専用釜を使い、一釜一釜丁寧に直火で炊き上げるのがこだわり。創業当時からの名物「奈良七種釜めし」をはじめ、大和肉鶏、ウナギ、秋にはマツタケや栗など、バリエーションの豊富さも魅力。旧家の大きな屋敷を改装した店内で、絶品の釜めしに舌鼓を。
2お酒を選ぶひとときと、一杯を嗜む瞬間を「農と発酵Zen」で。
農と発酵Zen
(徒歩2分/約120m)
■奈良市大宮町7-2-15
tel:0742-93-6611
10:00~20:30 月曜定休
※飲食は11:00~
最終入店19:00(20:00L.O.)

奈良県の地酒をはじめ、海外産の自然派ワインや日本ワイン、クラフトビール、チーズやコーヒーがそろう酒店。オーナーが語る生産者の思いに耳を傾けながらお気に入りを選べるのが楽しい。店内には角打ちスペースがあり、朝飲みや昼飲み、一人飲みをバルとして利用できる。
3朝から夜まで異なる顔を持つベーカリー「cojikanopanya」
cojikanopanya
(徒歩9分/約700m)
■奈良市芝辻町4-2-4
tel:0742-93-3513
8:00〜17:00
(なくなり次第終了)
【カフェ】8:00~15:00
【宿題カフェ】15:30~17:00
【夜カフェ】18:00〜21:00
土・日・祝日定休

もっちりとした湯種食パンや、地元・植村牧場とコラボしたほの甘ミルクパン、お酒にも合う惣菜パンなど、約50~60種のパンが並ぶ。カフェスペース併設で、午後には子ども向けの「宿題カフェ」、夜は大人が楽しめる「夜カフェ」へと時間帯でスタイルを変えるのもユニーク。
4「和菜やLemon」の優しい味のおばんざいをお酒と共に
和菜やLemon
(徒歩2分/約120m)
■奈良市大宮町7-2-37
電話非公開
平日のみ12:00~(日替わり
ランチなくなり次第終了)
18:00〜24:00(23:00L.O.)
不定休

「女性一人でも気軽に立ち寄れ、いつでもご飯を楽しめるお店を」と2023年にオープン。「毎日食べても飽きない優しい味」をコンセプトに、旬の素材の味を生かしたおばんざいとお酒を提供する。春には、佐保川沿いに咲き誇る、美しい桜並木を眺めながら食事ができるのも◎。
5「トラットリア・ポンテ 奈良」で、ホテルビュッフェをカジュアルに

トラットリア・ポンテ
奈良
(徒歩2分/約100m)
■奈良市大宮町7-1-45
ノボテル奈良1F
tel:0742-32-3022
11:30~14:00(13:30L.O.)
17:00~21:30(21:00L.O.)
無休

奈良の食文化を取り入れた本格イタリアンをビュッフェ形式で提供するオールデイダイニング。数々のメニューの中でも、大きな窯で焼き上げるピザが絶品と評判。オープンキッチンでシェフが調理するライブ感も楽しい。ホテルビュッフェをカジュアルに堪能できるのも魅力的。
ベースにした小麦粉を使用している












